読書感想文 小説編 『春にして君を離れ』 ミステリの女王が送る、犯罪なしの傑作小説

小説

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緊急事態宣言が発出された間、皆さんどう過ごされていたでしょうか?

普段は飲みに出かけたり、旅行に行ったり、外出が中心に生活していたのに、家に居ざるを得なかった人も多かったことと思います。

家に強制的にいることで、自分と向き合う時間を取れたという人も多いのではないでしょうか。

そんな「強制的な自己対話」を主題にした小説が約80年前に出版されているので、今回ご紹介したいと思います。

最近読んで本当に面白かった本の一つです。

『春にして君を離れ』by アガサ・クリスティ です‼

紹介の前に

アガサクリスティといえば、数々のミステリーを世に送り出した、イギリスの女性作家ですね。『ミステリの女王』と呼ばれ、世界中でいまだに愛される有名作家です。

『そしてだれもいなくなった』や『ナイルに死す』などのミステリーが有名ですが、この『春にして君を離れ』も非常におすすめです。

あらすじ

イギリス人で中年の女性ジョーンは、弁護士の夫と3人の子供を持つ主婦だ。生活はそれなりに裕福で、子供たちは全員独立しており、完璧な家庭生活を送ってきたと感じている。

バグダッドにいる娘の看病を終え、一人でイギリスへ帰国することになったが、砂嵐が発生し、次の列車が来るまで砂漠で待つことになった。
普段は家事や地域活動、社交に飛び回り、思い悩むこととは無縁のジョーンだったが、何もすることのない旅先で自分の人生を振り返り始め…。

魅力① 犯罪は起こらない、だけどミステリ

ミステリーですが殺人や犯罪は起こりません。

読者が読み解いていくのは、ジョーンというの女性の真実の姿です。読者はジョーンとともに彼女の人生を振り返り、彼女の回想と気づきを通して、彼女が本当はどんな人生を過ごしてきたのかを理解するという不思議な本です。

一人の女性の回想と現実の行き来だけでほぼすべてが構成される作品ですが、彼女はどんな人間なのか?また、彼女の家族は?彼女の周りで起きていることの意味が次々と明らかになります。

最終的にすべての出来事の意味が明らかになり、全く異なるジョーンの様相ようそうが浮かび上がるのは、流石さすがミステリの女王というべき手腕しゅわんです。

隠されていることを暴くこと、人の心理を掘り下げる力、違う角度から物事をみればどのようになるのか?という客観的な視点を取り扱う力が遺憾いかんなく発揮はっきされています。

魅力②

ここまでで「よし、読んでみよう!」と思った人は、ここから先は読まないでください。

ここから先はネタバレ含みます!!

そして、魅力②を読みたい方は、お手数ですが↓にスクロールをお願いします。

この本がとても魅力的な理由は、この作品のテーマが重いからです。
この話で描かれているのは、「人生の不都合を直視する勇気、選択する勇気」の大切さ、そしてそれを持てなかった場合は・・・・・・・・・・どのような人生を送る羽目になるのか、という一つの不幸な結末です。

その不幸は数十年前のイギリス特有のものではなく、現代に生きる読者にもあてはまるものです。ジョーンとその夫の人生を目の当たりにした読者は、自分の人生の理想はなんなのか?今まで不都合と対峙してきたか?を自分に思わず問いかけてしまいます。そんな衝撃を読者に与えてくれる、素晴らしい良書りょうしょです。

若い人にも年齢が高い人にも読んでもらいたいです。どの人が読んでも、等しく「いかに生きるのか」という問いかけを突き付ける、すばらしい作品だと思います。

 

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